2015年10月13日火曜日

高級なオトモダチ





     ほどなく、なぜ彼女がそれまで会ったこともない綾ちゃんに「擦り寄って」
    きたのかおぼろげながら解ってきた。いや、背後霊の坊さん云々にいちゃもん
    つけるつもりじゃないんだけどね。だけど彼女と付き合っていくうちに
    やっぱり説得力に欠けるというか、それとは別に事情があるような気が
    してきたんだ。






     ホメオパシーだったんだ。彼女は(当時夫も一緒になって)ホメオパシーの
    勉強をしていることを聞きつけて綾ちゃんのことを彼女の「仲間だ」と
    直感したんだ。残念ながらそれは大勘違いなんだけど。





     彼女が綾ちゃんちに持ち込んでくる書籍、特にオーラソーマやレイキや
    パワーストーンなど「気」を整えるスピリチュアルヒーリングの本の中には  
    必ずと言っていいほどホメオパシーへの言及が出現する。
    わずか一言だけのこともあるが「ホメオパシーと同様」とか「ホメオパシーに
    つながる」とか「ホメオパシーに比する」などなど。
    文脈はどれも同じで本書に語られるメソッドの効果、実証は「あの」ホメオ
    パシーに通じるところがあり、信頼に値するものなのだ、といった(科学的に
    立証されていない、しかしながら医学の世界で受け入れられて実績のある)
    ホメオパシーを引き合いに出すことで権威付けとして(ほとんどの場合)
    強引に使用されていた。




     綾ちゃんはそれまでそちらの方角?からホメオパシー療法を眺めてみたことが
    なかったので妙に、なるほど、と膝を打ちたいような感触に襲われた
    ものだった。なるほど、「こちらの」方面からしか物事を見たことのない人
    にはホメオパスが「ちょっと高級な」オトモダチに見えることだろう。





     彼女には郷里に彼女より、よりパワーの強い女友達がいるとのことだった。
    その方がご自分のショップをお持ちでそこでオーラソーマと共にホメオパシー
    セット(由井寅子さんの開発したキット)を販売しているとのこと。
    (彼女はミュンヘンに来る以前はそのお友達からスピリチュアルの教示を
    受けていたようだった。)
    日本ではホメオパシーのレメディーは健康食品扱いだから薬局以外の普通の
    お店に置くことができるのだ。寅子さんに批判的な綾ちゃんだがこの時も
    ああ、やっぱり、と正直がっかりした。




     でももしかしたら本当の意味でがっかりしていたのは彼女の方だったんじゃ
    ないんだろうか?
    だって綾ちゃんには彼女が期待するような「特別な能力」なんて何一つない、
    ただの理屈っぽいオバさんなんだもの。



     おそらく彼女は綾ちゃんの姿に郷里の親友の姿を重ねあわせて
    いたのだと思う。







         

アミ、小さな宇宙人
これは数あるスピリチュアルブックの中でも綾ちゃん
イチ推しの本です。スピリチュアルに興味のある人も
ない人も、アミの語る真理の言葉に酔いしれることでしょう。


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