2015年12月10日木曜日

恋人探しのように






     息子は成長期で見るたびにでかくなる。毎日顔を合わせているのに
    まるでタケノコだ、という時期にそろそろ1/1のチェロを持たなければ、と
    先生に言われた。分数楽器の頃は借りてきた楽器に大して文句も言わなかった
    先生(元バイエルン放送響首席奏者)が俄然張り切りだした。





     『いいですか、今回だけはものすごく良いものを買いなさい。昨今は中国製の
     素材などでびっくりするほど安いもので音も良質なものが出回っているけれど
     これはお薦めできない。今は良くても5年、10年先の保証が出来ないし
     何よりも財産としての価値がない。あなたのお子さんが音楽の道に進むなら、
     今、出来うる限り一番良いチェロを買って音楽性を磨いてあげるべきだし
     もっと上手になってもっと素晴らしいチェロに出会った時にそれを資金源に
     できる。たとえこの先音楽に進まなかったとしても、万が一彼が資金難に
     陥った時には彼を助けてくれる。』





     なんだか似たような口上を不動産売買の時に聞いたような気がしないでも
    ないけれど、、、んでもおっしゃることはよくわかるよ。綾ちゃんは
    ピアノ探しの時にも経験したからね。最初は息子のお嫁さんを選ぶような
    気でいたのに途中からエンジンがかかって自分の恋人探し!?の気分に
    陥ってしまったものだ。あーあ、おそろし。息子が本当に恋人連れてきたら
    どうなるんだろう?



     うちのピアノは2台。アップライトがスタインウエイ社でグランドが
    ベヒシュタインだ。ピアノも一台一台音が違うからこれ!というのに
    出会うまで妥協せず(お値段はとことん妥協できるものを探して)
    頑張った。これというのが見つかった時には綾ちゃんみたいなど素人でも
    鍵盤に触れただけで天にも昇る心地がしたものだ。
    良い道具に出会った時っていつもそうだ。
    触れるたびに、ああ、出会ってよかった、何て幸せなんだろうって思うんだ。
    そして不思議なことに良い楽器で練習してると本番で良くない楽器に当たっても
    普段身につけた「音」を出すことができる奇跡。



     音楽家にとって楽器は武器であって恋人でもある。剣士にとっての剣。
    書道家にとっての筆。たかが道具じゃない。お互いを支え合って鍛えあって
    磨き合う大切な愛すべきパートナー。そう、やっぱり恋人そのものだね。
    






多分、世界中で一番有名なチェリスト パブロ カザルス
残念ですがこの時代の人の演奏は録音がひどすぎて
良さがよくわかりませんね。





   






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