2016年11月10日木曜日

わかってくれると思ったんだ



     
      そのあとの日々は穏やかでとてつもなく優しい時間になった。



     Sは(ミュンヘンの住人ではないので)しょっちゅう電話をくれた。
    出張先から会議や会食の合間にかけてくれたりして恐れ入ったが(全くもって
    友情の厚さに改めて感謝だ)綾ちゃんも出来る限り連絡を入れ逐一報告した。



     辞表提出の後、いつもよりさらに人間関係が良好になったことに
    Sはほとほと感心してくれて



      『アヤコはさ、全くもって最良のやり方で説明したんだよ。
      たまげた。脱帽さ。普通、この種類の退職劇は泥仕合いになって
      当たり前なんだ。まあ、最後の最後まで気を抜かずに行こう。』



     綾ちゃんがSから入れ知恵されていた辞意表明後の時間の過ごし方は
    もっともっと「過激」なものだった。
    でも綾ちゃんはここで皆と家族みたいに過ごしてきたんだ。雇用主と
    労働者が互いの取り分を奪い合いながら戦っていたわけじゃない。
    法律家の目から見ると一見無駄に思えるかもしれない「ひと手間」が
    結局余計な労力やストレスを軽減することだってある。そう綾ちゃんは
    Sを説得したんだ。
    綾ちゃんとドクターは二人三脚で仕事のことはものすごくよく分かり合って
    いるからね。わかってくれると思ったんだ。






          ミュンヘンの初雪に昔懐かし雪ソング
     チューリップも財津和夫もイマドキの人は知らないだろうな。  
     綾ちゃんが小さかった頃、福岡発のスターは海援隊にチューリップ。
     武田鉄矢に財津和夫だった。この曲綾ちゃん大好きです。

       絶え間なく降り注ぐこの雪のように君を愛せばよかった
       窓に降り注ぐこの雪のように二人の愛は流れた







                 

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