2013年2月5日火曜日

シャボン玉 飛んだ ⑮






      そんな風にして私たちはあの辛い時期を乗り越えていった。



 毎日焚き続けるお香とろうそく。四十九日までは続けなくっちゃと思っていたが、
ふと、中国の人って宗教はどうなっているんだっけと思い当たった。
初七日とか四十九日とかきっと私たち日本人と同じ感覚じゃあ無いはずだよね。
ドクターは博識の人なので一通り色んな「知識」はお持ちだけれど
今回のハルさんの件で何をどうしなさいと言われた訳ではない。ハルさんが
お亡くなりになられた日、いつの間にかろうそくが(といってもお灸用に
用意しているもの)灯されてお香が焚かれていた。私は何となくあとのケアを
引き受けちゃったけどこのままでいいのかな?改めてこの話題を口にするのは
気が引けちゃうな。



 ドクターとご家族の皆さんは新教のクリスチャンだ。ドイツに来られてから
洗礼を受けたって聞いてるけど、四十九日=リ•インカネーションの思想って
受け入れてもらえるのかなあ?人が亡くなった時こそ輪廻転生の思想は
残されたものを悼み癒し慰めるのだと信じてもいいかしら?




     『先生、仏教で言う四十九日の法要をご存知でいらっしゃいますか?』



 私は日本で通常いわれるところの四十九日、つまり来世への転生のための準備期間に
ついての説明を試みた。現代中国では、宗教というものを国の文化として
取り入れて来なかったため一般市民には縁の薄いものになってしまった仏教思想。
けれど先生にとって私の説明、つまり仏教の教えによると、死者は 亡くなってから
49日間はこの世とあの世をさまよって新しい生へと旅立つ準備をしている、という
考え方は言葉の一つ一つがすーっとお香の煙がたなびいてそのまま身体の中に
沁み込んでいくような感触で「入って」いくのがわかった。



    『ああ、ありがとう。輪廻という言葉を、今、ここで聞くと私自身が
    救われた思いがするねえ。』





 素直に喜んでもらえた。



 私たち日本人よりももっと濃い仏教的背景を引き継いでいるはずの中国に今、
輪廻転生の思想さえ無いんだ。けれど禅やお寿司や鍼治療が「ナウい(死語か?)」
ドイツの人たちと話すよりも自然に受け入れられる感覚がある。
本来あったはずの川筋に水を引き入れると何事も無かったかのような顔をして
水は流れていく。そんな感触だった。







(つづく)

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