2013年4月26日金曜日

南の島から来た彼女  ⑨



                 案の定だ。



 ううん。みんな商売熱心だよねえ。こんな風にお互いに商売し合う人もうちの病院で
よく見る風景だけど今回は額が大きい。リードさんがさりげなくほのめかす「成功に
導くプラクシス(病院)経営」のスタンダードにうちが「ついていっていない」という説
にうちのドクターははまってしまった。なんで?って私は不思議で仕方が無い。ドクターは自分のやり方に自信が無いのかな?
リードさんは『もしドクターがお望みなら指導して差し上げますけど。』って大上段に
構えてドクターはあっさりと受け入れた。
そして講習会の代金は日本円で約90万円以上。やっぱり向こうが得するように
出来てるじゃない。



 私は極力他人様の事には口出ししない主義だが今回は何度も悩んだ。どうしても
私には思えてしまうのだ。あんな「ただのドイツ人の女」(人種差別発言!ごめんなさい!)にどうしてうちの病院の事をつべこべ言われなきゃならないんだろうって。
うちの病院は何から何まで「変わって」いる。全然病院らしくない。内装もスタッフも
システムも治療も。ここに一歩足を踏み入れるとドイツじゃない別の空間になる。
中国の雰囲気をふんだんに取り入れて凝った内装にしたりしてる漢方の診療所なら
ドイツにはたくさんあるけどうちはそういう「外側」だけじゃなくって、むしろ
ドイツらしくしようとしてもどこからどう見ても隠しきれない中国のオリジナリティーに
溢れている。ここに「居着く」患者さんはそういうところに惹かれて来る人たちだ。
従って「ご縁の無い人」だってもちろんいる。大雑把だったりして大陸的なやり方に
ついていけないって感じて去っていく患者さんだっている。でもそれでいいんだ。


 私たち日本人は自分たちのオリジンとアイデンティティーに基本的に自信がある(人が多いと思う)。でも中国人たちはちがうのかな。共産圏だもんね。ドイツ人に「ドイツではこうでなきゃいけない」なんて説教されるととたんにそっちへなびいていっちゃう。
今回はそんな危険に満ち満ちていた。


(つづく)


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