2013年7月9日火曜日

ドクターの負傷  ⑨



 私が患者さんの指圧を終えて先生の治療室にあたふた戻ってみるとそこはもぬけの殻。



 もう、また勝手なことしてえってドクターのお姿を探すとご自分のお部屋に(例の
車椅子もどきを使って)自力で戻って(ということは鍼を抜いたり着替えたり靴を
履いたりもしたんだな。ああ、治療室が戦場のように散乱していた訳だ。)患者さんの
カルテを検討してらした。先生は私の顔を見ると、


   『いやあ、吉岡さん。さっきはどうもありがとう。お陰でずいぶん良く
   なりました。もう大丈夫です。煎じ薬も出来上がって飲んでいるしね。』


とのたまわった。



 ばかあ!そんな訳無いでしょう!確かに一通りの施術を受ければ患部と身体全体が
ふわっと軽くなった感じがする。でも歳も歳なんだからたった一回の治療で全快は普通
あり得ない!これだからお調子者はあ!!


 車椅子もどきで患者さんの元へ行こうとする。慌てて車椅子を押してアシスト。



     『こんにちは。 ○ ○ さん。いかがですか?調子は?』


 って、お〜ま〜え〜の〜調子はどうなんだあ!!と突っ込みたくなる私。
出来るだけ患者さんにこちらの窮状を悟られないように(って無理だけど)
一生懸命先回りして先生の手の届く範囲に必要なものを次々に並べていく。患者さんの
問診が終わると鍼の施術が始まる。鍼を打つ場所まで先生をがらがら押していき消毒は
私が行う。鍼を渡していく。


 こうしてみると、ここに勤め出して1年とちょっと。前もって示し合わせている訳でもないんだけど先生の次の動きとかかなり解るようになっているなあ。
先生に不自由な思いや身体的に辛い思いをさせないようにと頑張りました。

(つづく)


       

 
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