2016年3月16日水曜日

高級プライベート医院の邂逅




     実は先日、Zおばあちゃんとモニカさんがクロスオーバーした。
    どんな「高級プライベート医院」なんだ!ここは!?




     モニカさん、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれないが住所不定の
    本名を明かさない浮浪者のおばあちゃんだ。言葉の端々からおそらく
    不法滞在者のようだ。職業(と言えるのか?)は空き瓶回収業だと
    つい先日聞いた。妙なご縁でなんと彼女はうちの患者さんとして
    居ついてしまった!彼女は3ヶ月に一度ほどのペースでふらりとやってくる。
    少しずつお金を貯めて鍼の料金に達したら治療を受けに来るらしい。
    それが礼儀だと考えているらしく、必ず綾ちゃんに3ユーロほどの
    チップをはずんでくれる。要らないと言ってもどうしても受け取って
    欲しいと譲らない。彼女の治療は必ずドクターが全て一人で行うのに。




     いつぞやは綾ちゃんがふとモニカさんを後ろから覗いたら薄いズボンが
    ぱっくりと5センチ四方位に穴が空いていてこりゃあ大変だと思って
    慌ててうちの余っている作業着をあげた。たまたまドクターがサイズを
    間違えて買ってきたやつがあって誰も着ないので持て余していたズボンだ。
    


     彼女にも(というかおそらく負い目があるからこそ)プライドがあるらしく
    最初は施しを受けるのをものすごく嫌がったが結局受け取った。




     ただし彼女はとても穏やかな人好きのする性格でうちでは皆に愛されている。
    身なりはみすぼらしくてもおそらくかなり気を遣っているらしく身体は
    清潔に保っている。ちっとも臭くないし服だって靴だって汚れてはいない。



     これも気を遣ってかドクターがどんなに勧めても決して食べ物を口に
    しないしお茶も飲まない。いや、「施し」じゃなくって本当にただうちの
    ドクターは他人にあれ食えこれ食えというのが好きなだけなんだけどね。



     経済的に負い目のない人たちは何のわだかまりもなく「じゃ、ごちに 
    なりやす」てな具合なんだけどモニカさんとZおばあちゃんは決して
    何も口にしない。ここら辺はものすごく似ている。





     でも二人を見比べると明らかだ。どう見てもZおばあちゃんの方が
    圧倒的勝利で浮浪者に見える。彼女が待合室にいると他の患者さんが
    「引いて」いるのがわかるもん。






           3・11はドイツでは大震災の日ではなく
           「フクシマ」の日です。



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