2012年11月26日月曜日

砂漠の彼方に光る井戸  ⑥





     砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているから。





            「星の王子様」にでてくる最も美しい台詞だ。


 私はこの日、この瞬間、電撃的にこの台詞が脳裏にこだました。
そう、病に苛まれれば誰しも心が乾く。そこに必ずあるはずの美しい井戸を
見通せる「眼」を持てるかどうかに私たちの職業はかかっているのだ。

 





 あれから2週間後にヒュウちゃんは突然病院を辞めた。





 あれから1ヶ月後、シュピッツさんの病気は驚くべき回復を遂げることになる。
彼女への請求書の額は総額(日本円で約)16万円を超えた。
元気になった彼女はうちの病院に怒鳴り込んで来た。こんな額、払えるかって。



         あはは。


 先生はにこにこしてシュピッツさんに
   『まあ、お話ししましょう。解決策を考えましょう。』
と言って彼女を自分の部屋に連れて行った。保険会社を口説き落とすこつ
(そんなものあるのか?)を伝授してあと少し割引してあげたみたい。




 良かったね、シュピッツさん。




   「大切なことは目には見えないんだよ。」

                 「星の王子様」より



(終わり)

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