2013年5月7日火曜日

南の島から来た彼女  ⑰




    14時には終了するはずだった研修が終わったのは18時を超えていた。





 ああ、主婦失格、母親失格だあ!この一日の講習を通してわかった事と言えば
私の雇用主であるドクター一家の人たちが(というかドクターその人が)ガイジンの
価値観に弱いらしいということと、より「良い病院」を作るためにはたくさんお金を
かけて高級ホテルのような内装と備品をそろえこれまた高級ホテルのような応対、
マニュアル対応が求められるという事だけだった。



               ばっかみたい。



 生意気だけど私はわかっているつもりだ。良い病院、魅力的な病院経営のために
どんな努力が高いプライオリティを持っているのか。
 例えば私が初めてうちの病院に患者として電話をかけたときの事(4年前の事だ)、
病気の子供を抱える不安なママである私のかけた電話をとったのはうちのドクター本人
だった。

     『はい、ドクター ○○ 診療所。』


 さてみなさん、これまでの経験で病院に電話をかけていきなりそこのドクターが電話をとったという体験をなさった事がおありの方が一体何人いらっしゃるでしょう? 


     少なくてもドイツではありえないことだ。


 多くのドイツの病院では医者と電話で会話をする事に対して一分いくらで請求書が発生する。弁護士さんとかの法律相談みたいにね。リードさんもうちのドクターが気軽に
電話をとる事に対して「絶対やってはいけない事」と定義づけた。医者のステイタスに
関わるから。
だから私は初めて彼と会話をした時(先生はもちろん覚えてらっしゃらないだろう。
単なる料金問い合わせと予約の電話だったからね。)猛烈に感動したのだ。ここは
普通の病院じゃあないって。



 そういう、ちょっとしたキラキラ光る感動をどんな風に積み重ねていくかに全てがかかっている。リードさんのおっしゃってる事がわからない訳ではない。例えば衛生面を
ドイツのトップレベルに持って行く事(これはハードル高い)人員 • 労働条件を
そろえる事、そういった外的条件をあくまでドイツ人から見て「うわっ、中国人!」って卑下されないレベルに引き上げるのはものすごく重要だ。でもこれがトッププライオリティーではない。ましてやドイツ人の価値観にのっとって権威付けをしたりドイツ人の好きそうな細部にこだわった統一感を演出したってそれはドイツの病院の物まねにしかならない。その人にしか出来ないやり方を見つけるしかないのだ。それが本来どれほど困難を伴う事か。(そしてうちの先生がな〜んも考えずにどれだけそれをいとも簡単にこなしていることか。)


(つづく)




        さて、コスタリカのホーノルさんがちっとも登場しません。
        彼女はどうなってしまったのでしょう?



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