2013年10月5日土曜日

ハルさんの遺言と裁判   その4

      




                                   『 これはね、去年の春に撮った写真なんです。』




 ドクターはそういって写真を数枚見せてくれた。山の写真。春山の頂上で
笑う先生の奥様、お嬢さん、それから先生ご本人。暖かな春の息吹きも
わずかにその標高までは届かず木立の色合いは薄い。付近に大きな湖があり
湖面に見事な絵画を描いている。



        『  ハルさんご夫妻と二家族で登山したんです。ここはアルゴイ地方の
     山でね、彼の大好きな場所でした。誰もこの数ヶ月後に彼が亡くなって
     しまうなんて思いもしませんでした。』





         『 ほら、裏を見てください。彼はまめな人でね、一枚一枚丁寧に
      メッセージを添えてくれるんです。』





   そういってドクターは私に写真の裏書きを示した。日付、場所、エピソード付きの
ものもある。そしてどの場合も最後に彼の署名が添えてあった。




      『いいですか。これが彼の署名です。
      それではこれから、現在争点となっているハルさんが
      死の前日に遺したとされる遺言書を見せてあげましょう。』




    先生はそうおっしゃって、あと一時間後に迫った裁判の配布資料の
ファイルを取り出した。







           


オクトーバーフェストのお化け屋敷内部。
(写真撮影不可とは書いてなかったのでオッケーだと思います。)
手前が綾ちゃん。思わず怖くて目をつぶってうつむいてしまったけど
出てきたオバケはいくらなんでも残念すぎるヒトだった。










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