2014年3月25日火曜日

男と男の物語 六





       ヒルトンホテルでの昼食バイキングは楽しいひと時だった。




    綾ちゃんはフランクフルトにきたばかりで知人も友人もおらず
   会社の人に会わない週末はひとりぼっちだったし会社の同僚と
   プライベートでお会いするというのも新鮮だった。
   綾ちゃんは英語でおしゃべりというものをほとんどしたことがなかったので
   Tさんのお友達とちゃんとお話できるか緊張していたら、彼の方がドイツ語
   ペラペラだったので助かった。Tさんと綾ちゃんは日本語、Tさんとお友達は
   英語、綾ちゃんとお友達(名前を思い出せない)とはドイツ語という
   三つどもえコミュニケーションが妙に上手くいったものだ。
   コミュニケーションに時間がかかる分、話題に困るということがなく
   ゆっくりと日常の小さな話題をおしゃべりした。




    Tさんはお寿司の食べ放題に燃えていて、


      『限界まで食べるぞお〜!』


   とはしたないほど食欲を振り絞り必死に食べまくっていた。
   ドイツにお寿司ブームがやって来るのはもう少しあとの話で
   この頃はドイツでお寿司なんて超高級品だったのだ。



    綾ちゃんは(当時)小食でとてもじゃないけど元が取れないので
   バイキングがあまり好きではなかった。誘われなかったら自分から
   行ったりはしなかったと思う。その日もやっぱりすぐにお腹いっぱいに
   なって早々とお茶を飲みながら男性軍の奮闘を眺めたり応援したり
   していた。




    時間制限はなかったので彼らは実に良く食べた。2人とも
   体格は小さめだったのにお腹がぱんぱんになるほど食べて
   ふう、もう食べきれないというところで切り上げそのあと
   ゆっくりお茶休憩をした。



    ふふ、楽しかった。と思っていたら



    『ね、明日は映画に行こうよ。(お友達を指差して)コイツも明日
    ヒマだし。トレーラーの画像が素晴らしく美しかったから絶対観ようって
    決めてたヤツがあるんだ。』




    え??明日も??3人で???




    綾ちゃんもヒマだしこれと言って断る理由もない。
   でもなんか彼のペースにはまっていく感じもあるなあ。どうしよう。



    そして明日も会う約束をして綾ちゃんは彼らと地下鉄の駅で
   別れたのだった。



           

カフェ ハウプトヴァヒェ
地下はフランクフルト交通の要所
地下鉄や郊外電車の中心街






   

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