2014年3月27日木曜日

男と男の物語 七




          あの時に見た映画のタイトルを思い出せなかったので必死で調べて見た。


             


                激流 RIVERWILD




 英語吹き替えだったに違いないがわかりやすいストーリーで助かった。画像が美しく
自然描写が綺麗だったので映画館にいることを忘れてマイナスイオンのただ中で深呼吸
している気になれた。



        綾ちゃんはどっちかと言うとジェリー ゴールドスミスの音楽に魅了されて
しまった。これがゴールドスミスの世界なんだあって感動。映画が終わったあと
軽くご飯を兼ねてカフェに入り、Tさん(音大出身)に音楽が素晴らしかったと
感想を述べると


          『そう?僕はありゃあ、ワンパターンだと思うけどなあ。』

とちっとも 感心した風ではなかった。



     二日続けて二人と付き合ったせいでTさんのお友だちのことも少しずつわかってきた。(綾ちゃんはここ数日必死で彼の名前を思い出そうと努力していた。そのかいあって
やっとで思い出した。バースという名だったんだ。) なんか、最初のニュアンスでは
ロンドンから遊びに来ているような感じだったが、よくよく聞いてみるとこちらで働いているのだそうだ。
       オッフェンバッハという地域に会社があり、住まいもそこだそうだ。あの辺りは
高級鞄のゴルトプファイルや高級磁器メーカーのヘキスト本社がある地域だ。
会社もきっとたくさんあるのだろう。





        夜も更けて、明日は仕事。じゃあTさん、また明日。バースさん、次の機会まで。
楽しかったです。さようなら。
綾ちゃんはくるりと踵を返して帰路に就こうととした、、、が、何か、本当に些細な「違和感」を感じて振り返った。綾ちゃんの目にはTさんとバースさんが二人で地下鉄に
通じるエスカレーターを降りていく情景が映った。何も変わったことなどない、か?



      いや、やっぱりおかしい。バースさんはオッフェンバッハにお住まいだと確かに
言った。ならば三人ともバラバラの進行方向のはずだ。なぜTさんと一緒に地下鉄に
乗るのだろう?二人で飲み直すのか?





              突然綾ちゃんは雷に打たれたような衝撃を覚えてその場に氷ついてしまった。
                           ある「可能性」が稲妻のようにアタマをよぎったからだ。





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