2013年12月21日土曜日

新しい同僚 その十九





                    皆さん、税金はきちんと納めましょう。それは社会人としての常識です。




                  ドイツでは所得税は高い。特に綾ちゃんのような共働きでしかも夫との収入格差が大きい(少ない)場合はなおさらだ。綾ちゃんだって毎月給与明細を見るたび税金を引かれる前の額(元々大したことない)と手取り給与の額(更に雀の涙)それぞれにため息をついている状態なのだから。だいたい半分近くに減ると思って良い。







               だけどミニジョブって本当にそんなにいいのかな?税金払わなくっていい代わりに年金もないし、第一、これ以上そこの職場では何の将来もないってことだよ。





                  ドイツという国に税金を納めるという行為が「無駄」であって「とんでもないこと」だと思う人はこの国から出ていくべきだと基本的に綾ちゃんは考えている訳だけれど、残念ながら外国人の多いこの国ではその手の人の話も良く聞く。







               ただ、リリーさんの一件で思うのは、彼女のそのような思想が案外彼女の(ドイツ人の)夫の影響である可能性も大だなっということだ。夫婦というのはお互いの価値観に大きく影響される。例え彼女が税金というものを「決して払ってはいけない」無駄なものだと考えていたとしても、夫が普通に税金は「きちんと納めるべきもの」と捉えて生きていればこれまでの夫婦生活で必ずその点に触れる意見交換があったはずだと思う。「何故税金を納めなければならないのか」なんて子供が小学校の社会科の授業で習ってくるようなテーマだ。我々夫妻ならしのごの議論する前に、「自分たちの子供の前でおおっぴらに出来ないような後ろ暗い行為は慎もう」なんて結論に落ち着くに決まっているのだ。








                 だってそんなに大騒ぎするほどの額でもない。







                    だってドイツでは医療費や教育費、社会制度の充実ぶりは(細かな点ではいろいろあるとはいえ)素晴らしいものだ。中国人の人々だって自国のシステムとは比べものにならないだろうに。この国に来てどれほどその恩恵に与っていることか。その上、まだ税金をちょろまかそうなんて図々しいにもほどがある。







                 そういう奥さんをのさばらせておくドイツ人夫の顔を拝んでみたいものだ。








                     と、綾ちゃんはドクターから話を聞いて憤慨した訳だ。







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